CDの話(3)

今では個人ユーザーでも簡単にCDやDVDを作成できるようになった。とは言っても、CD系列ではCD-RやCD-RW、DVD系列ではDVD-RやDVD-RWなどの書き換え可能な光ディスクの話である。便利なもので、ハードディスクに収まり切らなくなったデータは、これらの光ディスクにコピーしておけばよい。

そうやって、重要なデータや個人的に大切なデータを光ディスクに保存している人も多いと思う。特に、今までビデオテープで保存していた映像をDVDにした人は多いだろう。しかし、ここに一つの問題がある。ビデオテープなどのアナログ・メディアよりも穏やかではあるが、光ディスクも経年劣化は避けられない。10年単位で考えたとき、光ディスクのデータが失われてしまう可能性は十分ある。つまり、光ディスクに保存したからと言って安心していてはいけないのである。

アナログ・メディアに比べて、ディジタル・メディアがデータの長期保存に重宝されるのは、ディジタル・データが無限に複製できるからである。アナログ・メディアは複製を繰り返す内にデータは劣化していき、終には壊れてしまう。一方、ディジタル・メディアは何度複製してもデータは劣化しない。メディアの寿命に達する前に、データを複製していけば、半永久的に完全なデータを保持できる。

だが、データ保持のためにCDやDVDをそう頻繁に複製する人がいるだろうか。普通は一度作成したらそれっきりであろう。当然の帰結として起こるのは、突然のデータの消失である。確かにディジタル・メディアは何度でも複製できるが、一度メディアが壊れてしまえば、その中にあったデータは永久に失われてしまう可能性を孕んでいる。特に、物理的な凹凸ではなく色素の化学変化を用いているCD-Rなどの光ディスクは、CDに比べてデータが壊れやすい。

写真やビデオなど、大切な想い出をディジタル・メディアに保存するのは良いことだと思う。しかし、ディジタル・メディアの特性を良く理解せずに放置していると、その想い出を失うことになりかねないのである。