X'masについて
このX'masという表記は色々なところで見掛ける。英和辞典にも載るくらいの有名な誤記の1つであるが、未だに使用されているのが現状だ。では、どうしてこれが誤記なのか、どうして正しい表記Xmasが浸透しないのか考えてみる。
'とは何か
まず、この ' という記号の意味について考えてみる。この記号はその場所にあったいくつかの文字が省略されていることを示している。例えば、
- 語頭
- '07 (20 07)
- '97 (19 97)
- 語中
- don't (do n o t)
- I'm (I a m)
- ev'ry (ev e ry)
- 語尾
- -in' (-in g)
などが挙げられる。普通、省略された文字は発音されない。また、上の例では省略が少ないが、"Int'l (Int ernationa l)" "Gov't (Gov ernmen t)" という例もある。
ちなみに、所有を表す 's は、古い英語における所有格語尾 -es の省略形の名残だと言われている。
Xmas とは何か
略せずに書けば、Christmas である。Christ はキリスト、mas はミサを意味しているらしい。つまり、理由は別として Xmas という略記においては Christ → X という置き換えが行われており、ただ単に文字を省略しているのではない。ある意味、何も省略されていない。
こうしてみると、X'mas のおかしさがわかると思う。何も省略されていないのに、省略記号があるのだ。日本語にすれば、妙な伏せ字(「は○てな」「ダ○イアリー」など)のようなものだろうか。
何故、誤記がなくならないか
端的に言って、日本人が英語を知らないからに他ならないと思う。日本の英語教育では細かな単語や文法は熱心に教える(これもネイティブからすれば噴飯物だと思う)が、日常的な略語や基本的な記号の意味はほとんど教えない。これらは(教科書的な)文章を読む際にはほとんど問題にならないのだが、日常的にはどうだろうか。
また、Xmas という綴りが日本人には見慣れないこともある。「Xはよくわからないが、masはわかる」ということで、その間に ' を置くと落ち着くのかもしれない。しかし、そのための記号は別にあり(ハイフン -)、やはり誤用と言わざるを得ない。